「もう黙っちゃいられん!」(7) 『世の中に不満があるなら世の中を変える』(大学生)
日々の労働、生活の傍ら、原発問題について抱いている、
様々な方の「思い」を、紹介するシリーズ
「もう黙っちゃいられん!」
あなたの身近にも、こういう「思い」を抱いている人が、いるかもしれない。
そんな風に感じて頂けたら、嬉しく思います。
第7回目は、4月から社会人となる、大学生の方です。
この方は、昨年10月のスーツデモにて、スピーチをしてくださった方です。
自らの就活について語った、このスピーチは評判を呼び、ニュース記事にもなりました。
「脱原発忘れて」と迫った会社への就職を辞退――スーツデモ参加の大学生(オルタナ)
今回は、デモ参加の感想も含めて、社会人となる “熱い思い” を表明いただきました。
『世の中に不満があるなら世の中を変える』
私にとって原発の問題はさほど関心の強い問題とはいえなかった。
脱原発の抗議行動やデモに参加することも多くなかったし、
なにより”わざわざ”路上で声をあげることにちょっぴりめんどくささを感じていたのが正直なところである。
そんな時に脱原発スーツデモでスピーチをしてほしいと声をかけていただいて、
卒業を控えているだけの大学4年生だし、これも経験と思い引き受けることにした。
といっても正直なにを話していいのか分からなかった。
メルトダウン、核燃料サイクル、そういった原発の知識は私より他のデモ参加者の方のほうが詳しいに決まっている。
だから大学4年生にしか話せない内容をあえて選び、スピーチのテーマを「就活」にしぼった。
新橋駅につくと、右も左もスーツ姿のサラリーマンだらけで、独特の「空気」を纏っていた。
来年からは自分もこの世界に生きることになるのだと思うととなんだか背伸びをしているような気分で、
スーツ姿の世界に遅れをとらないように急ぎ足で集合場所の桜田公園を目指した。
公園についてしばらくして、デモが出発した。
前から2列目を歩くことになった私は、前も横も見渡せるこの位置から歩道のスーツの人達を観察をした。
こっちを振り向きもしないスーツの人達は、なんだか「空気」で対抗しているように私は思えた。
まるで『俺たちはサラリーマンだ。お前たちとはちがう。』と背中が語っているように見える。
一方で手を振ってくれるスーツの人達や、物珍しげにこちらを見つめるスーツの人達もいて、
新橋の街に私たちを受け入れてくれる、同じ「空気」を吸っている、という実感が持てた瞬間だ。
やがて自分のスピーチの番がまわってきた。
うまくなんて話せなくていいから、この「空気」に対抗してやろうという気持ちで口を開いた。
就活で面接官に『余計なことは考えないでくれ』と言われたアノ違和感を、
そのまま新橋のスーツの人達へ向けるような思いで訴えた。
ちょっとずつだが新橋の「空気」が変わってくるような気がしたのも事実だった。
『世の中に不満があるなら自分を変えろ』
これは、テレビアニメ「攻殻機動隊」第1話で、主人公の女の子が追い詰めたテロリストに銃口を向けた時に言い放った台詞だ。
私はこれが3.11前の日本のスローガンだと思っている。
でもそれは3.11までだ。
全国各地で起こるデモを土台にして変わったのは「世の中」の方だ。
今回のスーツデモでそれをとても痛感した。
目には見えないが、この世界には必ず存在し続けている「空気」を感じとりながら私たちは生活している。
こうした一つ一つの行動が「空気」を変えてきた。
『世の中に不満があるなら世の中を変える』のだ。
スーツを着た4月から、デモに行きまくってやろうと思う。